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ロンドンの「浅草橋駅」が大変身 [鉄道]



表題は、以下のプレスリリースを見て思ったことです。


『ロンドン最大の太陽光発電システムにHIT太陽電池モジュールを採用』
http://panasonic.co.jp/sanyo/news/2011/10/04-1.html


一応解説します。ロンドンの中心地付近でテムズ川を渡っている鉄道橋は、知る限り3か所あります。(ビクトリア駅付近も含めれば4か所)

その内の2か所は、川を渡ってすぐにキャノンストリート駅・チャリングクロス駅という終点になってしまうのに対し、残る1か所は、川を渡ってからも線路が伸びていて、市街地の北側にあるセントパンクラス駅へと繋がっています。この路線で川を渡ったところにある駅が、プレス発表にあるブラックフライアーズ駅です。(現在のブラックフライアーズ駅は川の北側にあります。)

テムズ川を隅田川にたとえると、キャノンストリート駅とチャリングクロス駅は、川を渡ってすぐに終点という点から東武浅草駅に似ていますが、ブラックフライアーズ駅は、市街地を抜ける路線が繋がっているという点から総武線の浅草橋駅に似ていると思うのです。

新しいブラックフライアーズ駅はテムズ川の上にホームを作っているみたいなので、浅草橋駅が隅田川の上に移動した様子を空想してしまいます。



「十把一絡げ」からの脱却を [ディベート]


久しぶりの更新になります。JDAの秋大会が近づいてきたので、簡単なアドバイスを書きます。

自分がディベートをしてきたことで発想にどんな変化があったかを一点だけ挙げると、「十把一絡げな発想をしていることに気がつきやすくなった」というものがあります。つまり、多種多様なはずのものをあたかも一種類しかないかのように扱っているときに、「自分は今、十把一絡げな発想をしているな」と気づきやすくなったということです。

(ちなみに、「十把一絡げ」は「じっぱひとからげ」で変換できます。)

慣れないうちは、十把一絡げな発想に基づいた主張をしてしまいやすいのですが、そこから脱却することで、強い主張や反論ができるようになる――というのが、今回の趣旨です。

「十把一絡げ」の例


今回の原発廃止の論題であれば、以下のような主張が出てくることでしょう。

  • 日本の原子力関連技術は世界一進んでいる/進んでいない。
  • 自然エネルギーは原子力の代わりになる/ならない。
  • 原発が立地している地域への補助金は、地域の発展に役立っている/いない。

本来、「原子力関連技術」「自然エネルギー」「原発が立地している地域」はそれぞれ多種多様なはずですが、上記では十把一絡げに扱っています。

こういう「十把一絡げ」な主張は、そもそも強くありません。例えば1点目の「日本の原子力関連技術」について問題点を挙げると、以下の通りです。

  1. 「日本の原子力関連技術」といってもピンからキリまであるのに、それらが全て世界の最先端を行っているという主張は現実からかけ離れている。(同様に、「優れている技術は皆無」という主張も現実からかけ離れている。)
  2. イシューの先頭(例えば DA の最初のカード)にこの主張があると、そこが否定されただけでそのイシュー全体が成立しなくなったような印象をジャッジに与えてしまう。
  3. 後述の通り、「十把一絡げ」の原因はリサーチ不足にあることが多いので、同じイシューの他の部分でもアラが見えてしまうことがある。

類似の現象としては、用語や概念の混同というものもあります。例えば「放射線」「放射能」「放射性物質」はそれぞれ意味が違います。しかしそれらを混同していると、リンクが繋がっていないイシューを作ってしまったり、無意味な反論をしてしまったりします。(「放射 *能* 漏れが発生する」という主張に対して「放射 *線* 漏れはない」という主張で反論したつもりになっているなど。)

「十把一絡げ」の原因


十把一絡げな発想をしてしまう原因は、「よく知らないから」につきます。人間は、よく知っているものは細かく分類しますが、よく知らないものは大雑把にしか分類しない(できない)ものだからです。日常生活を送る分にはそれで不自由しませんが、ディベートにおいてその発想をしてしまうと、主張として弱くなってしまいます。

余談ですが、私が大学生だったころ、別の大学のディベーターに「ディベートをやっている人は経済学部か理系が多いですね」と言われて絶句したことがあります。その人は文学部で私は工学部でした。その人にとっては、経済学部は文学部と同じ文系ということで学部単位に分類したのに対し、工学部は馴染みがないので大雑把に「理系」と分類したのでしょう。

「十把一絡げ」への対策


一言で言ってしまうと「もっとリサーチして詳しくなりましょう」なのですが、それでは身も蓋もないので、別のコメントを。

まずは、自分の発想が「十把一絡げ」に陥っていないかどうかを判断することです。そのためには効果的な方法がありまして、それは具体例をどれくらい挙げられるかで判断するというものです。

例えば「原子力関連技術」として、具体的な技術を挙げられるでしょうか? あるいは「自然エネルギー」の具体例はどのくらい挙げられるでしょうか?(太陽光発電と太陽熱発電の違いは説明できるでしょうか?)――こんな問いに対してうまく答えられなかったら、自分はこの件についてよく分かっていない、つまり十把一絡げな発想をしている可能性が高いと思ってよいでしょう。

(白状しますと、上で「十把一絡げ」の例を挙げようとしたとき、2件め以降がなかなか思いつきませんでした。つまり私は、今回の論題で出てきそうな議論についてあまり把握していなかったのです。)

自分が詳しくない箇所が分かったら、そういった箇所を重点的にリサーチします(当然ですが)。

では、詳しくなって具体例をいろいろ挙げられるようになったり細かく分類できるようになったとして、どうやって議論に反映させたらよいでしょうか?

ノウハウを一つ挙げると、「該当例が一つでも存在すれば我々の勝ち」みたいな構成にすることです。例えば、DA のシナリオが「今までは日本の優れた原子力関連技術を輸出することで海外での事故を防いでいたが、日本の原発を廃止すると輸出が止まってしまって海外で事故が起こる」みたいなものとすると、何も「日本の原子力関連技術は世界一ィィィ」と主張する必要はなく、海外での事故防止に貢献する可能性のある技術を具体的に挙げればよいのです。(今から原発を廃止しても過去の貢献が消えるわけではないので、DA にしたかったら「今後の貢献ができなくなる」みたいな主張に繋げる必要があります。)

一方で、「日本の原子力関連技術は世界一進んでいる」みたいな十把一絡げな主張に反論するときは、何も「優れている点など皆無」と主張する必要はなくて(これまた十把一絡げ)、「優れている点はあっても、それは日本の地理などに特化したものであり、海外では役に立たない場合もある」(例えば耐震技術は地震のない国では不要)みたいな主張で十分ですし、その方が現実に基づいた強い主張になります。

(この手の DA を、私が学生の頃は『インターナショナル セーフティ カルチャー』と呼んでいました。)

――今回はこんなところで失礼します。



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PSEye のマイク間隔は 2cm [PC]

PSEye の記事の続きです。


PSEye には 4個のマイクが内蔵されていますが、外から見ただけではマイクの間隔が分かりません。そこで、分解して計測してみました。


DSC09633.JPG
基板を取り出してみました。マイクの上に、プラスチックのパーツが被さっています。


DSC09631.JPGDSC09632.JPG
プラスチックのパーツを外してみました。


DSC09628.JPG
DSC09629.JPG
DSC09630.JPG
ノギスを使ってマイクの間隔を計ってみました。ただし、ノギスがマイクに触れるとずれてしまうので、代わりにプラスチック製のパーツの側で計りました。ご覧の通り、きれいに 2cm 間隔で並んでいることが分かります。


というわけで、PSEye のマイク間隔は 2cm であると判明しました。なお、マイクと入力チャンネルとの対応関係はやや変則的で、以下の通りです。(1,2,3,4 でも 4,3,2,1 でもないのが謎です。)




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今回はここまでです。




否定側第二立論で DA を出すのは自滅行為 [ディベート]

(この文章では、以下の略称を用いています。 AD: 利益, DA:不利益, 2NC: 否定側第2立論, 1AR:肯定側第1反駁, 2NR: 否定側第2反駁 )


JDA春大会が近づいてきたので、この大会の課題だと私が感じていることについて書きます。

JDA大会は立論2回・反駁2回という時間フォーマットを採用していますが、2回ある立論をうまく生かしたスピーチはなかなかお目にかかれません。特に否定側で顕著で、「熱い 2コン(2回分のスピーチ時間を使ってイシューを組み立てること)がなかなか見られない」といった点に限らず、2NC で新たな DA が出てくるという、危険性を熟知している人なら決してやらないようなとこも比較的頻繁に見られます(大会のたびに1回は見ているように思います)。しかも、決勝に残るくらいの実力を持ったディベーターであっても、それをやってしまうのです。

ここまで読んで、「否定側第2立論で新しい議論を出すのは、ルールでは認められているのでは?」と思った人は、ぜひ以降も読んでください。実は、弱点を自ら見せているに等しいくらいに危険な行為なのです。「危険とは聞いたことがあるけど、理由は知らない」という人も、ぜひ読んでください。



ルールのおさらい


ではここで、立論2回・反駁2回という形式のディベートについて、ルールをおさらいしましょう。反駁では新しい議論を出せないのは当然ですが、1AR に関しては以下のように例外があります。

  • 反駁のスピーチでは、新しい議論を出しても無効。
  • ただし例外的に 1AR では、2NC で新しい議論が出てきた場合に限り、新しい議論で反論することができる。

もし 1AR で例外が認められなかったら、2NC で新しい議論を出すことで否定側は必ず勝ててしまいますから、この例外は当然認められるべきものです。

一方、2NC への反論として出てきた 1AR の新しい議論に対し、最後のスピーチである 2NR で再反論するのは、新出議論(ニュー アーギュメント)となるので無効です。もっとも、1NC と 2NC の議論を使って間接的に反論することは一応可能ですが、最終反駁は本来そんなことをするスピーチではないので、時間が全然足りません。

ここから、以下の重要なことが判明します。

  • 1AR で出てきた新しい議論に対しては、それが 2NC での新しい議論への反論である限り、否定側は反論できない!


例えば、2NC で何か DA を出し、それに対して 1AR でターンアラウンドが出てきたとすると、否定側はターンアラウンドに反論することもできなければ、そんな DA を切り捨てようと思っても、リンクを自分で否定することさえもできないのです。これがどれだけ危険か、お分かりでしょうか?

(ただし、肯定側が 1AR でリンクへのアタックをした場合であれば、そのアタックを認める形で DA を否定することができます。言い換えると、肯定側は 1AR でターンアラウンドを出すのなら、リンクへのアタックを避けた方が勝ちやすくなります。普段のディベートと全く逆ですね。)

なお、DA 以外のイシュー(ケースアタック・トピカリティー・カウンタープランなど)であれば、2NC で出しても DA ほどは危険ではありません。ケースアタックへのターンアラウンドはあまりあり得ませんし(おそらくケースと同じ主張になるから)、トピカリティーやカウンタープランは容易に「捨てる」こと(最終反駁で言及しないこと)ができます。(「2NC でトピカリティーを出すのは教育上よろしくないから負けにすべし」みたいな主張もないわけではないのですが、JDA 大会で見ることはほとんどないので、ここでは言及しません。)

というわけで、否定側が意識すべきなのは、「よほど特別な理由でもない限り、2NC で新たな DA を出すのは避ける」ということなのです。

実例


2NC で新たな DA が出てきた例として、2008年秋大会の決勝を紹介します。このときの論題は「使用済み核燃料の再処理を放棄する」です。(プランは「青森県六ヶ所村の再処理工場を廃止する」といった感じのもの。)

  • 否定側は 2NC で、2つめの DA として「国と青森県とは『六ヶ所村を核燃料の最終処分場とはしない』という約束をしているため、再処理工場を廃止すると、すでに運び込まれた使用済み燃料を各地の原発に送り返す必要がある」というリンクから始まるイシューを出した。
  • 肯定側は 1AR にて、反論として「各地の原発は使用済み燃料を保管する場所がもうないため、原発の運転を停めざるを得なくなる」というカードを読んだ。2つある DA はどちらも「原発が運転を続けて使用済み核燃料が生成され続ける」ことが前提だったため、このカードを読んだ時点で、どちらもリンクがなくなった。

2NC で出てきた DA のインパクトは「再処理前の使用済み核燃料を運搬するのは危険」「国は青森県との約束を反故にするのは許されない」という2点です。後者は例によって「判断基準」からみのものですが、ここでの本題ではないので、これ以上は言及しません。

ここで、肯定側の出した「プランの後では原発が停まる」というカードに注目してください。このような内容は、後で否定側に都合よく利用される可能性があるので、1AC や 2AC では読むのを躊躇してしまうカードです。結局、普段は出す機会があまりないカードです。
しかし、1AR において、2NC で出てきた新しい DA への反論として読めば、これを否定側に利用されるおそれはもうないので、安心して読むことができるというわけです。

なお、ケースの側には AD が2つありましたが、どちらも「既に運び込まれた使用済み核燃料を再処理する際に発生する問題を未然に防ぐ」というものなので、プランの後で原発が停まっても、AD の大きさには影響がありません。


余談ながら、翌年の 2009年のJDA秋大会の決勝でも、2NC で新しい DA が出ていました。こちらでは 1AR でターンアラウンド相当の反論が出ていたものの、2AR ではこのターンアラウンドを積極的には残さなかったため、これ(2NC で新しい DA を出すこと)で勝敗が決することはありませんでした。


肯定側での利用方法


このように(残念ながら?)、JDA 大会では、2NC で新しい DA が出てくることが決して稀ではありません。これは肯定側からすると、対策さえしておけば楽に勝てるということを意味しています。

例えば今回の外国人労働者の論題であれば、以下のような展開が考えられるでしょう。

  • 「失業」「倒産」といった、今回の DA としてよく出てくるインパクトに対して、ターンアラウンドとなる資料を用意しておく。(「長い目で見ると、企業の倒産はかえって社会に有益である」みたいな内容のもの。)
  • もし 2NC で、前述のインパクトを持つ DA が出てきたら、1AR でターンアラウンドを出す。リンクへは反論しない方がターンアラウンドを残しやすい。

別の側面から言うと、肯定側は試合前に勝ちパターンについて頭の中でいろいろシミュレートしていると思うのですが、2NC で新しい DA が出てきたときは、事前に考えた勝ちパターンにこだわらず、その DA へのターンアラウンドを優先して勝ちに行く――みたいな臨機応変さも重要ということです。あとは、1AR と 2NR との連係プレーも重要です。例えば、1AR は DA のターンアラウンドに重点を置いていたのに 2AR ではケースに重点をおいたスピーチをしたりすると、今度は一転して肯定側が不利になってしまいます。


JDA 大会において、2つの立論を生かしたスピーチのノウハウが根付くことを願って、今回は終わりにします。


(なお、場合によっては 2NC で DA を出しても危険ではないこともあり、例えば 1998年春の決勝などではそれを利用して否定側は勝利しているという例もあることはありますが、そういった例外への言及は次回以降にします。)



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PS Eye で多チャンネル録音をしよう [PC]

PS3 の周辺機器である PS Eye には、4個のマイクが内蔵されています。しかも、実は Windows PC でも、特殊なドライバーなしで 4チャンネルのオーディオデバイスとして使用できるのです。


3チャンネル以上の入力を持ったオーディオデバイスで、なおかつ比較的安価で入手しやすいものを探している人なら、使用を検討してみてはいかがでしょうか?

以下では、PS Eye を使って4チャンネル同時録音を行なう方法について、説明します。動作確認は Windows XP のマシンで行なっていますが、Vista でも同様に動くことを確認しました。


(注意)メーカー推奨外の使用となるため、以下は自己責任で行なってください。

PS Eye の取り付け



PS Eye を Windows PC の USB ポートに挿し込むだけです。ウィザードが立ち上がりますが、これはカメラのドライバーをインストールするためのものなので、「キャンセル」を押します。

wizerd1.PNG

ドライバーのインストール等は、特に必要ありません。


PS Eye で録音



PS Eye は、PC からは DirectSound 対応のオーディオデバイス(入力用・4チャンネル)として見えます。だから、DirectSound に対応した録音ソフトを用いれば、録音ができます。

ただ、フリーウェアで DirectSound 対応かつ多チャンネル(3チャンネル以上)録音が可能というものは、知る限りそれほど多くありません。以下では、Audacity というソフトを使って4チャンネル同時に録音する方法について説明します。

まず、以下のページから Audacity をダウンロード&インストールします。(2011.2.28 現在、最新版は 1.3.12 です。DirectSound で録音するためには、バージョン 1.3.1 以上である必要があります。 )

Audacity 1.3.12
http://audacity.sourceforge.net/?lang=ja

PS Eye を使用するためには、設定の変更が必要です。Audacity を起動したら、「編集」→「設定」を選択すると、以下の画面が表示されます。

setting_before.PNG

以下の画面のように変更します。赤色で囲んだ部分が変更箇所です。(「デバイス」欄の“USB Camera-”以降の部分は、別の数値が表示される場合おあります。)

setting_after.PNG

“OK”を押せば変更が反映されます。Audacity のメイン画面に戻り、録音ボタン(赤丸のついたボタン)を押せば、録音が開始されます。以下の画面のように波形が4つ表示されれば、成功です。

tracks_small.PNG

波形の表示を縦方向に引き伸ばすには、以下の操作を行ないます。

「表示」→「全てのトラックの拡張」

「表示」→「垂直方向に合わせる」


すると、以下のように、波形のトラックが縦方向に拡大されます。波形をさらに拡大するためには、波形の左側にある“0”または“0.0”(下図で赤く囲まれている部分)を左クリックします。(右クリックで縮小します。)

tracks_large.PNG


wav ファイルに保存



4チャンネル分のオーディオデータをそのままファイルに保存するためには、少しコツが要ります。(「ファイル」→「書き出し」を選ぶと、4チャンネル分がミックスされたモノラルのファイルが生成されてしまいます。)


「ファイル」→「複数ファイルの書き出し」を選ぶと、以下ような「メタデータの編集」ウィンドウが表示されます。以下のように、「ラベル/トラック名の後に番号付加」にチェックを入れ、さらに「ファイル名の前部」に“mic”と入れると、後で“mic-01.wav”~“mic-04.wav”という4つのファイルが生成されます。
write_multi_files.PNG

「書き出し」ボタンを押すと、以下ウィンドウが表示されます。
edit_meta.PNG

ここで、赤線で囲んだ欄を空にします(つまり、全ての「値」を空欄にします)。
edit_meta2.PNG

“OK”ボタンを押すと、トラック1~4 が“mic-01.wav”~“mic-04.wav”に書き出されます。つまり、モノラルの wav ファイルが 4つ生成されます。


(補足)
「メタデータの編集」ウィンドウにて「値」に何か文字列が残っていると、生成される wav ファイルのヘッダーが大きくなってしまい、ソフトウェアによっては読み込めなくなる場合があります(wav のヘッダーを 44バイトに決め打ちしているようなソフトの場合)。だから、「値」は全て空欄にしておいた方が無難です。

他のソフトで PS Eye を使用する



以下は簡潔に。

  1. Audacity 以外で DirectSound および多チャンネル録音対応のソフトを用いる。(例:REAPER
  2. ASIO4ALL などを用いて PS Eye を ASIO デバイスに見せかけた上で、ASIO 対応の録音ソフトを用いる。




外国人労働者の論題についてのアドバイス――プラン編(2) [ディベート]

(以下では、AD は “advantage”(利益)を、DA は “disadvantage”(不利益)を表わします。)


今回の「外国人労働者」の論題の下で、具体的に何を行なうのか、そして今の制度と何が異なるのかが明確に分かるようにするためには、プランをどのように書けば分かりやすいのかについて、続きを書きます。

現在の制度をどの程度残すかによってプランの書き方が変わってきますし、それに伴ってケースの構成も異なってくるでしょう。大きく3通りほど考えて見ました。

なお、最初に断っておきますが、以下はあくまで「ディベートの試合でケースとプランを出すなら、こうした方が聞き手に分かりやすいだろう」という観点で書いています。(専門家ではないので、本当に外国人労働者の労働を許可するとなったときに以下のような手続きをするかどうかは、分かりません。)

現在の在留資格を生かす場合


既存の在留資格の内、「定住者」や「特別活動」を申請者に渡すというものです。どちらの資格も現在は発行に制限があるので(申請すれば誰でも取得できるというわけではない)、その制限を緩和するという点が現在との違いとなります。

例えば「定住者」の資格であれば、以下のようなケースとプランが考えられるでしょう。

  1. 在留資格の中には「定住者」というものがあり、この資格を持っていればどの職種に就くこともできる。
  2. しかし現在は、「定住者」の資格を取得でき人には制限があり(日系人や難民など)、それ以外の人が申請しても却下されてしまう。
  3. その結果、いろんな問題が発生している。(不法就労に由来する問題)
  4. そこで、申請者が一定の条件を満たしていれば、どこの国の人であっても「定住者」資格を発行するようにする。(これがプラン)
  5. 「定住者」の資格を持っていればどの職業にも就けるので、不法就労に由来する問題は解決する。(「逆は必ずしも真ならず」なので、この点も証明が必要)

上で「この点も証明が必要」と書きましたが、証明は比較的簡単で、現在既に「定住者」の資格を持っている人達(主に日系人)がどのような環境で働いているかを調べ、不法就労よりもマシであることを示せばよいのです。


次に、「特定活動」という在留資格を発行するというプランについて考えてみます。「特定活動」は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」というものですから、プランを「原則全ての職種において~認める」と呼べる代物にするためには、若干の工夫が要ります。例えば、「申請者が希望する職種についてのみ就労を許可する『特定活動』資格を発行する」というのはどうでしょうか。具体的な例を挙げると、外国人である申請者が高齢者の介助を希望する場合には、その職種のみ「特定活動」として許可するような在留資格を発行するといった感じです。

(ケースの構成については省略します。)


在留資格を再編する場合


既存の在留資格を流用する代わりに、まさに「原則全ての職種において~認める」ための資格を新たに用意し、それを発行するというプランも可能です。(既存の在留資格は、必要に応じて廃止・統合します。)

この場合、ジャッジが「定住者」という在留資格を知っているなら「今の『定住者』と何が違うのか?」という疑問を持つでしょうし、否定側は「『定住者』という資格を与える」というカウンタープランを出してくる可能性もあります(トピカルだという気もしますが)。ケースには、そういったことへの対策を予め組み込んでおく必要があるでしょう。

「対策」として有効なのは、「定住者」を始めとする現在の在留資格の欠点を指摘し、それを解決する手段として新しい在留資格を発行するという流れにすることです。


  1. 現在の在留資格、特に「定住者」には制度上の欠陥があり、それが原因でいろんな問題が発生している。
  2. そこで、欠陥を解決した新しい在留資格を用意し、それを発行する。

この流れなら、「定住者」との違いも明確ですし、カウンタープランに対する反論にもなっています。
また、否定側が「『定住者』の資格を持っていても、問題は解決しない」みたいな資料を出しても、それは無意味です。(むしろケースの分析の一部なので、肯定側はうかっり反論しないように。)


……ただ、書いてはみたものの、このケースをサポートする資料が見つかるかどうかは分かりません。後述の「ギャップ」論題での資料探し」でも書きますが、現在の在留資格の欠陥を指摘する資料なら見つかるかもしれませんが、新しい在留資格や、そこからの解決性を示す資料となると、はたして見つかるかどうか……。


もっと大きな変更


在留資格の新設程度ではなく、外国人の労働や入国に関する基本的な方針を転換してしまうようなプランも、一応は可能です。

現在の日本において、外国人の労働や入国に関する方針の特徴を挙げると、以下の通りです。

  • 日本への入国の前に、予め申請して在留資格を取得する必要がある。申請をしないと、、「短期滞在」と見なされる(査証免除取決めを締結している国から来た場合)か、入国を拒絶される(それ以外の国から来た場合)かのどちらか。
  • ほとんどの在留資格には有効期限があり、期限を過ぎると失効してしまう。
  • 日本の入国管理方針は出入国管理型(入国時に在留と就労の資格をまとめて審査する形態)であるため、在留資格が失効すると、働くことだけでなく日本に滞在していること自体も違法となってしまう。

この特徴からの違いが大きいほど、現在の制度からの変更が大きくなります。例えば、日本にやってくる外国人に対して、以下の3点を満たす資格を無条件に与えるようなプランは、ものすごい変化を含んでいるわけです。

  1. 入国前の申請なしで、
  2. あらゆる職種で働くことが可能で(=合法で)、
  3. しかも期限は無制限。

このようなプランを、ADと DA とを考慮した上で出す分には別に構わないのですが、もしリサーチ不足によって何となくこんなプランになってしまったのだとしたら、プランを考え直すことをお奨めします。余計な DA を防ぐためには、特別な理由がない限り、プランによる変化を最小限にとどめた方が無難ですから。


「ギャップ」論題での資料探し


ここまで読んで、「プランの内容を決めるだけでもリサーチが必要なの?今までそんなこと考えたこともなかったのに」と思った人も少なくないと思います。そのようなリサーチが必要となるのは、論題が抽象的に書かれていてそのままではプランとして通用しない場合です。私はそのような論題を「ギャップ」論題と呼んでいます。(逆に、具体的に書いてある論題は「そのまんま」論題と呼んでいます。)

「ギャップ」論題の下でケースを作成する場合、「そのまんま」論題とはやや異なる手順やコツが必要になります。以下では、そんな点を紹介します。

「ギャップ」論題でケースを作る際に必要となる資料を、私は便宜的に3つのグループに分類しています。

  1. 現在の問題点を指摘している資料
  2. 問題を解決するために、何か新しい提案をしている資料(プランみたいなもの)
  3. 提案によって問題が解決することを示している資料

2のグループが、「ギャップ」論題でユニークに必要となる資料です。重要なのは資料の量で、一般に、1の資料は大量に存在しますが、2 の資料はそれよりも少なく、3 の資料はさらに少なくなります。

「新しい提案をしている人は、それによって問題が解決することも示しているのでは?」と思うかもしれませんが、「~すべきだ/しなければならない/する必要がある」という表現で終わっている資料が決して少なくないのです(評論家や社説など)。これは、ブランの導入部分や内因性(inherency)の証明にはなっても、解決性(solvency)にはなりません。

具体的なプランやそれに対応した解決性がないと AD の証明にはなりませんから、ケースを作るときは、上記 2 や 3 のグループに相当する資料を優先的に探し出す必要があるということです。(1のグループの資料はたくさんありますから、後から探しても十分に見つかります。)

参考までに、私が1993年春に外国人労働者のモデルケース作りに参加したときの経験を書きます。3のグループに属する資料として、「アムネスティーを行なうと……」や「公務員の通報義務を廃止さえすれば……」みたいなものは比較的早期に見つかったため、この2点をプランと解決性に入れることは早い段階でほぼ決まりました。ただ、それ以外にどんな要素をプランと解決性に含めるかは、良い資料がなかなか見つからなかった記憶があります。

(白状すると、1990年に「定住者」という在留資格が新設され、主に日系ブラジル人が単純労働の仕事に従事するようになっていたのですが、当時はリサーチ不足でそのことを知りませんでした。そのため、モデルケースのプランにも解決性にも「定住者」についての話は出てきません。)


――非常に長くなりましたが、これで、今回の論題の下でのプランの書き方(およびケースの作り方)に関するアドバイスを終わりにします。

なお、「定住者」という、就労制限のない在留資格が既に存在していることと、ディベートにおけるいわゆる“pseudo inherency”との関係については、今回あえて言及を避けています。機会があったら書くかもしれません。


外国人労働者の論題についてのアドバイス――プラン編(1) [ディベート]

(以下では、AD は “advantage”(利益)を、DA は “disadvantage”(不利益)を表わします。)


前回も書きましたが、外国人労働者の論題では、プランの書き方が難しい――つまり、あまり深く考えないでプランを書くと、具体的に何を行なうのかよく分からない条項ばかりになりやすい――という傾向があるみたいです。

例外的に、アムネスティー(「恩赦」という意味ですが、ここでは現時点での不法滞在や不法就労を不問とすることを表わします)を行うという条項は具体的ですが、これは一回限りのものなので、決してプランの主要部分ではないはずです。

今回は、プランが不明瞭になりやすい原因と、その対策について考えてみます。


最初に考えなければならないのは、論題とプランとの関係です。論題によっては、そのままプランとして通用するくらいに文言が具体的なものと、そうではないものとが存在します。例えば、「死刑/日米安全保障条約を廃止すべきである」などは前者、「刑事裁判において証拠として認められる範囲を拡大すべきである」などは後者です。
(さりげなく、政策ディベートでものすごく重要かつ基本的なことを書いています。)

では、今回の「認めるべきである」や、似た意味である「許可/合法化すべきである」という文言についてはどうかというと、私は後者(そのままではプランとしては通用しない)に分類しています。なぜなら、「行為X を認める」ためには、現在の制度がどうであるかによって、やることが変わってくるからです。やることとして分かりやすいのは、以下のどちらかの場合でしょう。


  1. 現在、ある法律によって X が明確に禁止されているのであれば、「X を認める」ためには その法律を廃止する。
  2. 現在、X は禁止も許可も明確にはされていないのであれば、「X を認める」ためには 新しい法律や解釈によって X が合法であると宣言する。


別に、こう書かなければならないという事ではなくて、上記の2つのどちらかであれば、プランが書きやすいということです。

(今回の論題の文言は「~労働を認める」ではなくて「~労働者を認める」なのですが、この点についてはあえて何も言いません。)


ところが、現在の出入国管理関係法令などを調べてみると、上記の2つのパターンのどちらでもない ことが分かります。大雑把に書けば、以下の通りです。(詳細は「外国人労働者の論題についての補足」を参照してください。)

  • 出入国管理関係法令等によれば、外国人が日本で働くためには、それに対応した在留資格が必要。(決して、労働が全面的に禁止されているわけではない)
  • 在留資格のうち、「定住者」という在留資格には就労の制限がない。(つまり、制度の上では既に、この資格さえ持っていれば全ての職種での労働が認められている。)
  • しかし現在は、「定住者」という在留資格を取得できるのは、日系人と難民(および法務大臣が認めた人)に限定されている。
  • 一方、「特定活動」という在留資格もあり、これを持っていると、出入国管理関係法令が規定している以外の特定の職種で働くこともできる。(「特定活動」を持っている外国人は一つの職種でしか働けないが、日本全体で見ると様々な職種で外国人が働いていることになる。)


「特定活動」について若干補足します。例えば、外国人が日本で看護の仕事をする場合を考えてみます。出入国管理関係法令で規定されている在留資格を見ても、看護の仕事のためのものは存在しません。(「医療」という在留資格なら存在しますが、これは日本の医師資格や看護資格を既に持っている外国人のみが取得できるという敷居の高いものだそうです。) でも、現在既にフィリピンやインドネシアから看護師を受け入れています。これはどういう在留資格に基づいているのかというと、それが「特定活動」なのだそうです。(参考: http://iwata-gyosei.com/z10_tokutei.html
こんな感じで、いろんな職種について「特殊活動」の在留資格を発行していくと、最終的にはほとんど全ての職種で外国人が働いていることになります。(資格を取得した本人は一つの職種でしか働けませんが。)


今の制度はこんな感じです。専門家ではないので確証はないのですが、「制度だけ見たら外国人の労働に対して強い制限があるようには思えないが、運用によって強い制限が発生している」といった感じでしょうか?



ここまでをまとめると、プランを書くときは、今の制度を考慮し、それとの差分を書くようにしないと、具体的に何を行なうのか不明なものになってしまいまいやすいということです。



では、今の制度を考慮に入れてプランを書くとするとどんな感じになりそうか――これについては、次回に書きます。



外国人労働者の論題についてのアドバイス――DA編 [ディベート]



(以下、AD, DA は、それぞれ“advantage”(利益), “disadvantge”(不利益)を表わします。)

2005年に同様の論題の下でジャッジしたときに強く感じたのですが、この論題では出てくる議論が「ピンボケ」になりやすいようです。主に以下の3点でそう感じました。

  • プランで具体的に何をするのかが不明
  • プランによって状況がどう変化するのかも不明
  • DAの具体的なシナリオも不明


今回は、DA について簡単なアドバイスをします。「外国人労働者を受け入れると犯罪が増加」という DA は、イシューとして真っ先に作りたくなるかもしれませんが、犯罪増加までのシナリオを、ステレオタイプや憶測なしできっちりと示そうとすると結構大変です。

以下は、当時そういう説明不足の DA を聞いたときに感じたことであり、とあるメーリングリストに書いたものの再掲です。



最初に全体的な感想を一言で言うと、以下の通りです。

    「分からないことだらけだ!」

つまり、仮に自分が当事者、つまり外国人労働者や雇用主や法務省や厚生労働省などになったと想定しても、プランがない場合とある場合とで、身の回りの状況がどのようなのか、今ひとつイメージできないのです。

(中略)

次は DA(犯罪)について。

仮に自分が外国人(まだ日本には来ていない)だとします。
プランがないときは日本に行く気が起きないのか、
それとも行きたいけど単純労働の在留資格が発行されないので断念しているのか、
他の在留資格で入国して不法に働いているけど犯罪は起こさないのか、どれなんでしょうか?

一方、プランがあるときは、日本に急に行きたくなるのか、
それとも在留資格が発行されて行けるようになるのか、
入国してから犯罪を起こすようになるのか、どれなんでしょうか?

また、来日の目的も、はじめから犯罪目的なのか、
それとも最初は労働目的なのにその後解雇されてから犯罪に手を染めてしまうのか?

はたまた、短期間のつもりで来日しているのか(だったら、解雇された時点で帰国しても良さそうだ)、
それとも永久に滞在するつもりなのか?

こんな感じで、「?」がいっぱいです。もちろん、人によって事情は異なるので十把一絡げは禁物ですが、それでも主要なシナリオというのはあるはずです。

こういった疑問点にきちんと答えるような感じで作っていくと、説得力のあるイシューになると思います。



ここからは、この DA を残しやすくするためのアドバイスです。


DA の先頭のリンクを「外国人がたくさんやってくる」というシナリオにすると、実は証明に苦労します。ケースには「今でも外国人労働者は存在する」という話が入っているでしょうから、それと比べてどの程度増えるかを示す必要がありますし、そもそも彼らは日本での外国人労働者受け入れ政策が変わったことをどうやって知り得るのでしょうか?

でも、「プランによって日本国内の外国人がユニークに増える」ということを示すだけなら、もっと簡単に証明できるリンクがあります。それは、「たくさんやってくる」の代わりに「帰らなくなる」と示すことです。

現在、合法・非合法を問わず、労働目的で日本にやってくる人はいますが、その多くは、一定期間後に帰国している――みたいなことが書いてある文献は存在するはずです。一方、プランがあると、待遇がよくなるので、彼らは日本に滞在し続けるようになる――みたいな文献もあるはずです。こういうシナリオにすると、ケースに入っている「今でも外国人労働者は存在する」「プランによって労働条件が改善する」という 2つの話をどちらも認めた上で、DA へのリンクを示すことができます。つまり、流入は一定でも流出が減れば、国内の人数は増えるというわけです。

DA の最初のリンクをこのように示した場合の注意点を1点だけ挙げます。このリンクはケースの「労働条件がよくなる」という AD に依存しています。だから、この AD に対してケースアタックをすると、AD だけでなく DA も小さくなってしまいます。つまり、いくらアタックしても、DA が AD を逆転できません。だからこの DA は、「労働条件が改善する」という AD が丸々残ってもそれを凌駕できるだけの大きさである必要があります。

(逆に肯定側からすると、「労働条件が改善する」という AD を切り捨てれば、この AD に依存した DA も道連れにすることができるわけです。)


――今回は、ここまでとします。


(余談)
2005年当時、ジャッジをしていて次のような議論のやり取りを見ました。確か DA には「犯罪集団が来日してくる」みたいなシナリオが入っていました(例によって詳細不明なのですが、ここではその点には触れません)。それに対して肯定側は「彼らが元いた国では犯罪集団が減るのだから、全世界で見たら犯罪の件数は変わっていないはず」と反論していました。あなたがジャッジなら、この反論をどう扱いますか?


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外国人労働者の論題についての補足 [ディベート]

(2/16修正: リンク切れとなっていた URL をできる限り復活させました。)




JDA の論題が「日本国は原則全ての職種において外国人労働者を認めるべきである」に決まりました。
自分にとって外国人労働者のトピックは馴染みが深く、15年以上前にモデルケースの作成に関わったほか、2005年には出入国管理法令などの文面を読んでみたりもしています。


今回は、その 2005年に調査して とあるメーリングリストに投稿したものを、若干編集して以下に掲載します。
ちなみに、2005年前期の論題は、以下の通りです。


「日本政府は出入国管理法令を改正し、原則すべての職種で
海外からの移住労働者の雇用を認めるべきである」


Resolved: That the Japanese government should allow the employment
of migrant workers from overseas in all or most workplaces by
amending the immigration laws.


----------------------------------------------------------------
投稿者: 廣江 厚夫
Date: 2005年5月6日(金) 午後2時30分
タイトル: 「移住労働者の雇用」と「在留資格」との関係(その1)


(前略)
表題の「移住労働者の雇用」と「在留資格」
との関係についていろいろと調べてみました。その結果を 3回に分けて
(長いので)発表したいと思います。



ただ、私は専門家ではないので、調査結果が間違っている可能性が大い
にあります。間違いを見つけたらぜひ指摘してください。

なお、入出国に関係する法令などは、法務省の以下のページで読むこと
ができます。ぜひ各自で読んでみることをお奨めします。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_hourei_index.html


------------------------------------------

「[00319] 反省会の写真&試合の感想」でも少し書きましたが、ケース
を聞いても、「移住労働者の雇用を認める」ことと「在留資格」との
関係や、さらには出入国管理関係法令(または入管法)の改正がなぜ
必要なのかといった点が不明でした。そこで、以下の順序で調べてみま
した。


(1)
まず最初に、そもそも入管法と雇用とがどのような関係にあるのかが
不明でした。(単純に考えると無関係そうなのに。)

この点についての調査してみたところ、以下ことが分かりました。

入管法(正式には「出入国管理及び難民認定法」)は、「在留資格」を
持つ人のみ日本への入国を許可するという方針を採っています。「在留
資格」には 27種類あり、「出入国管理及び難民認定法」の別表で規定
されています。別表は、以下のページで参照できます。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26SE319.html#3000000001000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

(または、以下のペーにも解説があります。)
http://www.hiraganatimes.com/hp/visa/file/visainfo1.htm


在留資格の中には、就労に関係あるものもあります。「別表一」の「二」
にある資格が主に該当します。これが、入管法と就労とが関係してくる
理由です。

入管法は、外国人の単純労働を直接禁止しているわけではなく、27種類
の在留資格の中に「単純労働」といったものがないことと、資格外の
就労を禁止していることから、結果として禁止ということになっていま
す。

さらに、入管法の罰則規定の中には、不法就労(資格外の就労)を行
なった外国人に対するものの他に、雇った側を処罰するものもあります。
以下の箇所です。
-----
第 七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役
若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  一  事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  二  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  三  業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
-----

まとめると、以下の通りです。

a) 入管法では、在留資格を持つ人のみ入国を認めている。
b) 在留資格の中には、就労に関するものもある。
c) 入管法では、在留資格外の就労をするのは禁止されている(不法就労
となる)。
d) 入管法では、不法就労者を雇用するのも禁止されている。



(以下は余談)
なお、日本の入管法で規定しているような、滞在の資格と就労の資格と
を入国時にまとめて審査する形態を「出入国管理型」と呼ぶのだそうで
す。国によっては、両者を別々に審査するところもあるみたいです。

http://www.gifu-keizai.ac.jp/~takeuchi/c3gaikokujinroudousha.htm
-----
3)外国人管理の形態
  出入国管理型;アメリカ、日本。入国時に一本だてで審査
  在留管理型;入国を認めたうえで、入国した外国人の滞在許可と就労許可
を二本立てで行う。
-----

以下のページの「ビザを取得すれば自動的に国内での在留が認められる
国」と「ビザと国内での在留は別のものとする国」という記述も、同様
の区別を指していると思われます。

http://www.hiraganatimes.com/hp/visa/file/visainfo2.htm


国を会社に、入国を入社に喩えれば、出入国管理型は「配属先が決まっ
た時点で入社も内定する」、在留管理型は「入社が内定してから配属先
が決まる」といった違いですかね?



27種類の在留資格のうち、「短期滞在」(いわゆる観光ビザ)について
も補足しておきます。国によっては日本と「査証免除取決め」を結んで
いて、そのような国から来た人はビザなして入国ができます。こういっ
た人たちは、「短期滞在」という在留資格の扱いだそうです。

最近では、愛知万博の来場促進のため、韓国・台湾からはビザなしで
入国できるようになったのが記憶に新しいところです。



次回は、「移住労働者の雇用を認める」ことと「出入国管理関係法令
の改正」との関係についてです。




----------------------------------------------------------------
投稿者: 廣江 厚夫
Date: 2005年5月6日(金) 午後2時30分
タイトル: 「移住労働者の雇用」と「在留資格」との関係(その2)


廣江です。

今度は「移住労働者の雇用を認める」のに「出入国管理関係法令を改正」
することが必要かどうかを調べてみました。


------------------------------------------------
(2)
「原則すべての職種で……移住労働者の雇用を認め」たことにするため
には、移住労働者たちに一体どのような在留資格を与えればいいのかを
考えてみます。

ここで参考になるのが、日系人の雇用です。1990年の入管法改正によっ
て日系人の雇用が認められたらしいのですが、彼らはどのような在留
資格を持って入国しているのでしょうか?

調べてみたところ、「定住者」という在留資格を持っているようです。

http://home.att.ne.jp/apple/kana_gairen/arcoiris/arcoiris001.htm
(現在はリンク切れ)
-----
また、1990年の入管法改定によって、就労制限のない「定住者」という
在留資格が設けられました。その結果、ニューカマー、特に日系ブラジル
人労働者が大きく増大しました。
-----

「定住者」という在留資格には就労制限がない(日本人と同様にどんな
職にも就ける)ので、「定住者」を単純労働者など任意の職種で雇用す
るのも可というわけです。

http://www.office-ohno.jp/special-topics(sonota-01)25.html
-----
出入国管理及び難民認定法において、日系二世、三世については、「日本
人の配偶者等」又は「定住者」の在留資格により入国が認めれることと
なっています。これらの在留資格をもって入国する者については、出入
国管理及び難民認定法上、在留期間は制限されていますが、その活動に
は制限は有りません。ですからこれらの在留資格を持つ日系人はいわゆ
る単純労働分野での就労も可能となります。
-----

なお、「定住者」の在留資格は、日系人の他に、難民と認定された人に
も与えられるそうです(さらに後述のように、それ以外の人でも法務大
臣の一存で「定住者」の在留資格が与えられることもある)。

言い換えれば、現在は日系人と難民などに限られている「定住者」とい
う在留資格を、それ以外の申請者にも与えるようにすれば、「原則すべ
ての職種で……移住労働者の雇用を認め」たことになりそうです。


(もちろん、他にも方法はいろいろとありそうですが。)




(3)
次に、「日系人や難民認定者以外でも、申請してきた人には定住者の
資格を与えるようにする」ためには今の制度をどのように修正すれば
いいのかを調べてみました。(調べれば調べるほど分からなくなって
くる感もあるのですが……。)


「出入国管理及び難民認定法」では、27種類の在留資格自体は定めてい
ますが、取得条件の詳細や在留期間などは下位の法令である法務省令に
委任しています。実際には、「出入国管理及び難民認定法施行規則」と
呼ばれる省令で詳細が規定されています。

『出入国管理及び難民認定法施行規則』
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukanho_ho14.html

つまり、「出入国管理及び難民認定法」は以下のような二重の構造をし
ています。(今回の論題で「出入国管理関係法令」や“the immigration
laws”(複数形)という文言になっているのは、このような二重構造
を反映させたためだと思われます。)


・出入国管理及び難民認定法(法律)
……在留資格を規定している。

・出入国管理及び難民認定法施行規則(法務省の省令)
……在留資格を与える条件の詳細や在留期間などを規定している。


大枠を法律で規定して詳細を下位の法令(政令や省令など)で規定する
という方法は、政治の世界ではよく行なわれていることで、こうする
ことで事態の変化にすばやく対応できるそうです(法律に比べて、政令
や省令は改廃が容易だから)。


# かつて「~する法律を制定すべきである」という論題のときに、「同
# 内容の政令か省令を制定する」というカウンタープランを出しまくっ
# ていたことを思い出す。今回は同じ手は使えそうにないけれども。


ところがところが、「定住者」という在留資格については、法律に「定
住者:法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を
認める者」と書いてある他は、詳細な条件は書いてありません。つまり、
上記の法律と省令には、「定住者という在留資格は日系人と難民認定者
に限る」といったことは一切書いてないのです。

調べてみたところ、日系人の定住者資格は、法務省の告示に基づいてい
ることが分かりました。「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二
号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定め
る件」という長い名前の告示です。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_hourei_h07-01-01.html

# こんな包括的な認定が、法律や省令ではなくて ただの告示でなされ
# ていたとは、ちょっと意外です。


ところが、さらに調べてみると、上記の告示に該当しない人に対しても
定住者の在留資格が与えられている事例があるみたいです。以下のページ
に詳細が載っています。

http://www.satsukilaw.com/satsuki22.htm

ここに出てくる「2000年2月2日から14日までに、オーバーステイの
イラン人一家、計4家族に在留特別許可が下りた」事例などは、規模こそ
小さいものの、内容はアムネスティーと同じに見えます。こういった
個別対応は、法務省の通達によって行なわれているようです。


「定住者」という在留資格を与える条件についてまとめると、以下の通
りです。

・日系人と難民認定者に対しては、「出入国管理及び難民認定法第七条
 第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げ
 る地位を定める件」という告示に基づいて包括的に与えられる。

・それ以外の人に対しては個別対応であり、そのつど法務省の通達に
 よって与えられる。

なお、「与えられる」と書きましたが、その前に申請を行なっておく
必要があります。申請なしで日本にやってきた場合は、たとえ日系人で
あっても、「短期滞在」の在留資格しかもらえない(査証免除取決めを
締結している国から来た場合)か、入国できない(それ以外の国から来
た場合)かのどちらかです。

では、「定住者」の在留資格をもらうためにはどのような申請が必要か
というと……以下のページあたりを参照してください。

http://www.office-ohno.jp/special-topics(syoumeisyo-01).html



余談ながら(余談が多いなあ)、「個別対応」といえば、まさにその
ための在留資格もあります。「特定活動:法務大臣が個々の外国人に
ついて特に指定する活動」(法文より)がそれです。ワーキングホリ
デー制度で来日して働いている外国人は、この資格を持っているとの
ことです。それほど詳細には調べていませんが、特定の職種のみの就労
を許可するなら「特定活動」の在留資格を与えるだけで実現できそうな
感じです。



長くなったので、最終的なまとめは次のメールに書きます。




----------------------------------------------------------------
投稿者: 廣江 厚夫
Date: 2005年5月6日(金) 午後2時30分
タイトル: 「移住労働者の雇用」と「在留資格」との関係(その3)



廣江です。表題の件についての調査結果のまとめです。


1. 「出入国管理及び難民認定法」によれば、在留資格を持っていないと
 日本に入国できない。在留資格は27種類あり、「出入国管理及び難民
 認定法」の中で規定されている。

 →だから、在留資格を追加したり再編したりするためには、「出入国
 管理及び難民認定法」の改正が必要だろう。


2. 同法によれば、資格外の就労をすることは禁止されている(不法就労
 になる)。また、不法就労者を雇用することも禁止されている。

 →後者の「不法労働者の雇用の禁止」を法文から削除するだけでも、
 「雇用を認め」たことにはなりそうだが……。


3. 現在の在留資格の中には、「定住者」と呼ばれるものがある。この
 資格には就労制限がないので、「定住者」がどんな職種で働くことも、
 「定住者」をどんな職種で雇用することも、合法である。

 →ということは、申請してきた外国人に「定住者」の在留資格を与え
 れば、「すべての職種で……移住労働者の雇用を認め」たことになる。
 新たな在留資格を設けるわけではないので、「出入国管理及び難民認
 定法」の改正は不要そうだ。


4. 現在、「定住者」の在留資格は、主に日系人と難民(と認定された
 人)に対して与えられている。これは、法務省の告示である「出入国
 管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二
 の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」に従って包括的に行な
 われている。

 →ということは、在留資格を与える対象者を変更したかったら、新た
 な告示を出せばいいわけだ。しかし、新たな告示を出すことが「出入
国管理関係法令を改正」したことになるのか、または“amending the
immigration laws”に該当するのかは、微妙なところ。


5. 日系人や難民認定者以外でも、申請したら「定住者」の資格が与え
 られることがある。こちらは個別対応であり、そのつど法務省の通達
 によって行なわれる。

 →ここから類推すると、一度限りのアムネスティーだったら、同様に
 法務省の通達だけで実現できそうだ。これは「出入国管理関係法令を
 改正」には該当しないだろう。



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JDA秋大会でのジャッジ(2) [ディベート]

(以下では、AD は advantage(利益)を、DA は disadvantage(不利益)を表わします。こう略すのが自分としては慣れているので。)


すっかり間が開きましたが、JDA大会の話の続きです。


前回、「判断基準」について「異文化」を感じることが頻繁にあったと書きましたが、その例についてです。


いくつかの試合で、「判断基準」と称して以下のような主張が出てきており、しかも最後の反駁までそれを伸ばし続けていたのですが、これらは勝敗にどう結びつけてよいのか、結構悩みました。


  • 「日本人が海外(特に発展途上国)で代理母に依頼するのを放任しているのは、許されない」
  • 「代理母の容認は他の政策と一貫してないから行なうべきでない」
  • 「危険を与える可能性があるから代理母は認められない」


他にも出ていたような気がしますが、共通しているのは、いきなり「~行なうべきでない」「~許されない」という主張をしているという点です。


つまり、通常の試合では、AD と DA とを比較し、AD の方が大きければ「すべきである」、逆なら「すべきでない」と判定するわけですが、上記の主張は、そのプロセスを省略しているように見えるのです。


では、これらの「判断基準」を出したディベーターがAD と DA とを比較を放棄しているのかというと、そうでもなくて、最後の反駁でどちらの話もしていたりします。(例えば、否定側第二反駁において、ケースの側では AD とターンアラウンドとを比較しているのに、DA の側では「判断基準」を伸ばして「この政策は認められない」と主張している、など)


このような「判断基準」をディベーターが最終反駁まで残した場合、どうやって勝敗に反映させればよいのか結構悩みます。反映のさせ方は以下のようにいろいろ考えられるのですが、いずれにしても説明不足に思えるからです。


  1. あくまでも、「AD と DA との比較」に落とし込む。例えば、「他の政策と一貫してないから採るべきでない」という主張は、「一貫性を乱すのは悪いことだ」という DA だと考える。
    → そうならそういう説明が必要。
  2. 「AD と DA との比較」という考え方を否定し、新しいディベートパラダイムを出していると考える。例えば、「他の政策と一貫してないから採るべきでない」という「判断基準」は、他の政策との一貫性のみで「すべき」か否かを判定するというパラダイムを出しているのだと考える。
    → そうだとしたら、「AD と DA との比較」を放棄した上で、この試合でジャッジが一貫性のみ判定しなければならない理由が必要。(いわゆる「パラダイムシフト」)
  3. 「すべき」か否かを判定するために、単純な「AD と DA との比較」の他に、一貫性や国家の役割なども考慮する新しいパラダイムを出していると考える。
    → この場合、「AD と DA との比較」を否定する必要はないが、この試合でジャッジがそのパラダイムを考慮しなければならない理由が必要。
  4. パラダイムを一つに絞っているわけではなく、上記の 1 と 2 のどちらに転んでも肯定側/否定側の勝ちという主張だと考える。
    → この場合、ジャッジが混乱しないための説明が必要。例えば否定側なら、「肯定側のプランは他の政策との一貫性に反している時点で、AD や DA とは無関係に否定側の勝ちが確定。もしジャッジがこの考えを受け入れられなくても、AD と DA の比較でも否定側が勝っている」と主張する。(もちろん、なぜ一貫性のみで判定しなければならないかの理由も必要。)


結局、「AD と DA との比較」を最終反駁まで伸ばしている以上は 2 は無理がありますし、1 のように AD や DA に落とし込みようにも説明不足ですし、新しいパラダイムと考えようにもそんな話は出てきていません。というわけで、「判断基準」は無視し、それ以外の議論で勝敗を決める……という、ディベーターにとっては不本意な判定をせざるを得ませんでした。


ジャッジやコーチによっては、このような「判断基準」(直接「~すべきでない」とか「~許されない」と主張するもの)を出すことを推奨している人もいると聞きます。このような「判断基準」をどのように勝敗に反映させているのか、教えていただけると幸いです。(批判しているわけではなくて、純粋に質問です。)



ちなみに、上記の 1~3 については、過去(といっても 1990年代なのですが)に実例があります。次回にでも紹介します。



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