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外国人労働者の論題についてのアドバイス――プラン編(1) [ディベート]

(以下では、AD は “advantage”(利益)を、DA は “disadvantage”(不利益)を表わします。)


前回も書きましたが、外国人労働者の論題では、プランの書き方が難しい――つまり、あまり深く考えないでプランを書くと、具体的に何を行なうのかよく分からない条項ばかりになりやすい――という傾向があるみたいです。

例外的に、アムネスティー(「恩赦」という意味ですが、ここでは現時点での不法滞在や不法就労を不問とすることを表わします)を行うという条項は具体的ですが、これは一回限りのものなので、決してプランの主要部分ではないはずです。

今回は、プランが不明瞭になりやすい原因と、その対策について考えてみます。


最初に考えなければならないのは、論題とプランとの関係です。論題によっては、そのままプランとして通用するくらいに文言が具体的なものと、そうではないものとが存在します。例えば、「死刑/日米安全保障条約を廃止すべきである」などは前者、「刑事裁判において証拠として認められる範囲を拡大すべきである」などは後者です。
(さりげなく、政策ディベートでものすごく重要かつ基本的なことを書いています。)

では、今回の「認めるべきである」や、似た意味である「許可/合法化すべきである」という文言についてはどうかというと、私は後者(そのままではプランとしては通用しない)に分類しています。なぜなら、「行為X を認める」ためには、現在の制度がどうであるかによって、やることが変わってくるからです。やることとして分かりやすいのは、以下のどちらかの場合でしょう。


  1. 現在、ある法律によって X が明確に禁止されているのであれば、「X を認める」ためには その法律を廃止する。
  2. 現在、X は禁止も許可も明確にはされていないのであれば、「X を認める」ためには 新しい法律や解釈によって X が合法であると宣言する。


別に、こう書かなければならないという事ではなくて、上記の2つのどちらかであれば、プランが書きやすいということです。

(今回の論題の文言は「~労働を認める」ではなくて「~労働者を認める」なのですが、この点についてはあえて何も言いません。)


ところが、現在の出入国管理関係法令などを調べてみると、上記の2つのパターンのどちらでもない ことが分かります。大雑把に書けば、以下の通りです。(詳細は「外国人労働者の論題についての補足」を参照してください。)

  • 出入国管理関係法令等によれば、外国人が日本で働くためには、それに対応した在留資格が必要。(決して、労働が全面的に禁止されているわけではない)
  • 在留資格のうち、「定住者」という在留資格には就労の制限がない。(つまり、制度の上では既に、この資格さえ持っていれば全ての職種での労働が認められている。)
  • しかし現在は、「定住者」という在留資格を取得できるのは、日系人と難民(および法務大臣が認めた人)に限定されている。
  • 一方、「特定活動」という在留資格もあり、これを持っていると、出入国管理関係法令が規定している以外の特定の職種で働くこともできる。(「特定活動」を持っている外国人は一つの職種でしか働けないが、日本全体で見ると様々な職種で外国人が働いていることになる。)


「特定活動」について若干補足します。例えば、外国人が日本で看護の仕事をする場合を考えてみます。出入国管理関係法令で規定されている在留資格を見ても、看護の仕事のためのものは存在しません。(「医療」という在留資格なら存在しますが、これは日本の医師資格や看護資格を既に持っている外国人のみが取得できるという敷居の高いものだそうです。) でも、現在既にフィリピンやインドネシアから看護師を受け入れています。これはどういう在留資格に基づいているのかというと、それが「特定活動」なのだそうです。(参考: http://iwata-gyosei.com/z10_tokutei.html
こんな感じで、いろんな職種について「特殊活動」の在留資格を発行していくと、最終的にはほとんど全ての職種で外国人が働いていることになります。(資格を取得した本人は一つの職種でしか働けませんが。)


今の制度はこんな感じです。専門家ではないので確証はないのですが、「制度だけ見たら外国人の労働に対して強い制限があるようには思えないが、運用によって強い制限が発生している」といった感じでしょうか?



ここまでをまとめると、プランを書くときは、今の制度を考慮し、それとの差分を書くようにしないと、具体的に何を行なうのか不明なものになってしまいまいやすいということです。



では、今の制度を考慮に入れてプランを書くとするとどんな感じになりそうか――これについては、次回に書きます。



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