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「十把一絡げ」続き [ディベート]

10/30 に JDA秋大会のジャッジをしてきました。予選2試合と決勝の全部で3試合をジャッジしました。これらの試合において、「十把一絡げ」という観点から気になった点を書きます。
(以降、AD, DA はそれぞれ advantage(利益)・disadvantage(弊害)の略です。また、今回の論題は原発廃止です。)

自然エネルギー

これについては、肯定側・否定側ともにリサーチが間に合わなかったという印象を受けました。典型的な流れとしては、以下の通りです。
  1. プランには「自然エネルギーの開発」みたいな条項が入っている。
  2. 否定側は「電力不足」的な DA を出す。
  3. 肯定側は「自然エネルギーがある(から大丈夫)」的な反論をする。
  4. 否定側は「自然エネルギーでは不十分」的な反論をする。
  5. 自然エネルギーについて、これ以上は詳細にならないまま試合が終わる。
個人的には、自然エネルギーの中でも地熱発電あたりの議論が出てくれると面白かったのですが……。

放射線と放射能と放射性物質

「放射能」は、本来の意味は「放射線を出す性質」のことですが、「放射性物質」(そのような性質を持った物質)の意味で使われることも多く、少なくともディベートの試合で出てくる「放射能」は「放射性物質」の意味で使われることが(経験的には)ほとんどです。
今大会では、これらを最初からあからさまに混同しているような例は見かけなかったのですが、反論に反論を繰り返しているうちにディベーター自体が混乱しているように見受けられる例がありました。
  1. ケースにて、「地震が起こると放射性物質が外に漏れる」という主張の後、「発ガン率は放射線の被曝量に比例する」というカードを読んだ。
  2. 否定側は「閾値以下の被曝は無視できる」と反論した。
  3. 以降、比例か閾値かで議論が繰り広げられた。
途中で、「放射性物質」から「放射線」に話がすりかわっているのがお分かりでしょうか? そのため、「比例なのか閾値なのか」という議論は、結論がどちらに転んでも、それだけでは試合の勝ち負けにはあまり関係ないという、何ともモッタイナイことになっていました。

臨界と自然崩壊

どちらも原子核の反応ですが、起こっている現象は異なります。福島第一原発では、地震発生時に臨界を止めることはできたものの、その後で燃料は自然崩壊によって熱を出し続け、それを冷やすことができなかったために結果として水素爆発が起こってしまったと私は理解しています。
さて、今回の大会で出てきたケース(肯定側第一立論で読んでいるモノ)では、一例を除いては、(1) 地震発生時に臨界を止められない(暴走する)可能性がある (2) 臨界を止められても燃料を冷却できない可能性がある――という二段構えになっていました。それに対して、否定側からの反論が、どちらに対してのものか不明な場合がありました。
つまり、「○○という装置が事故を防ぐ」的な反論をした場合に、それが「だから臨界を止められる」という結論につながるのか、それとも「だから崩壊熱を冷やせる」なのか、両方なのか、それ以外の作用の話なのか、よく分からなくなることがありました。

日本の原子力関連技術

原発廃止についての伝統的な DA の一つに、「今までは、日本の優れた原子力関連技術を海外に輸出することで海外での事故を防いできたが、プランによってそれができなくなってしまうために海外で事故が発生するようになる」というものがあります。(私は学生時代に、この DA を「インターナショナル・セーフティー・カルチャー」と呼んでいた記憶があります。)
今大会では、決勝で否定側が2番目の DA として出していたものがそうです。
この DA が議論されるときは、「日本の原子力関連技術」が十把一絡げに扱われることがよくあります。実際、否定側第一立論(1NC)では、「原子力関連技術」を不明瞭にしたまま出していました。
ただ、以降のスピーチにおいて、技術などを詳細にする方向に議論が進んだのは、評価できると思います。否定側第二立論(2NC)では、技術の具体例(製鉄・耐震・運転ノウハウ)と対象国(トルコ)を明確にしました。それに対して肯定側第一反駁(1AR)では、3つの技術それぞれについて「日本の原発を廃止したからといって、トルコにおいてこの技術が導入されないということはない」という反論をしていました。
1AR での反論が有効に機能したためか、否定側は最終反駁(2NR)ではこの DA を捨て、もう一つの DA とケースアタックのみを残すようなスピーチをしていました。
(この DA での主張は「事故が起こる」なのに対し、ケースアタックでの主張は「事故は起こらない」なので、否定側にとっては矛盾なく説明するのが難しいという事情もあったと思いますが。)


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