“Practicality”と“Workability”――その2 [ディベート]
引き続き、『Practicality と Workability』の再掲です。
以下で出てくる「今回の」論題というのは、JDAの2005年後期論題のことです。そのため、「~必要な法的枠組みを整備すべきである」という部分は、今回(2010年後期)とは食い違っています。
以下で出てくる「今回の」論題というのは、JDAの2005年後期論題のことです。そのため、「~必要な法的枠組みを整備すべきである」という部分は、今回(2010年後期)とは食い違っています。
今回はここまでです。---------------------------------------------------------------- ● 今回の論題での practicality とは? では、今回の「日本政府は、代理出産または着床前診断を実施するために必要 な法的枠組みを整備すべきである」という論題において、practicality と workability とは何を証明することでしょうか? 実は、「法的枠組みを整備すべきである」というワーディングのせいで、 practicality の範囲が少しややこしくなっています(後述)。また、当然 ながらプランの内容によっても変わってきます。 それでも、典型的なケースにおいては、以下のことを証明する必要があると思っ ていれば間違いないでしょう。 Practicality: プランの後で、代理出産または着床前診断が本当に実施される。 (医師たちが本当に実施する、など。) Workability: 代理出産または着床前診断が実施されたら、AD が得られる。 (問題が解決する、など。) JDA 大会の予選で見かけた 3つのケースでは、いずれも practicality は証明 されていませんでした。 ---------------------------------------------------------------- ● Practicality とフィアットとの関係 ここまで読んだ人の中には、「Practicality ってフィアットで仮定できな いの?」と思う人がいるかもしれませ。でも、両者は別物です。 フィアットについての詳細は『ディベート通論』あたりを参照してもらうこと にしまして(宣伝!)、ここでは簡潔に説明します。 フィアットとは、簡単に言えば「プランが採用されたと仮定する」ことです。 でも、採用されたからといってプランの内容が自動的に実現されるわけではな いのは、上の『猫に鈴』で分かるとおりです。ネズミたちが「猫の首に鈴をつけ る」というプランを採用したからといって、猫の首に鈴が自動的についてくれる わけでは決してありません。 同様に、日本政府がプランを採択したからといって、医師たちが自動的に代理 出産や着床前診断といった医療行為を実施してくれるわけではありません。別途 証明する必要があります。 ---------------------------------------------------------------- ● Practicality はどうやって証明する? Practicality は、いつ、どのように証明したらよいでしょうか? 「否定側に指摘されるまでは知らんぷりを決め込む」というのも、一つの作戦 かもしれません。でも、指摘された場合、第2立論で practicality を証明する 時間的余裕はあるでしょうか? ほとんどないと思います。 また、ジャッジによっては practicality を厳しく要求する人もいて、たとえ 否定側からの指摘が無くても「Practicality を証明していないので AD なしと 見なす」という判定をする可能性だってあります。というわけで、Practicality の証明は始めからケースに入れ込んでおくことを強くお奨めします。 では、今回の論題での practicality、すなわち「プランの後で、代理出産 または着床前診断が本当に実施される」ということを証明するには、一体どう したらよいでしょうか? そのものズバリを述べている文献が見つかればいいのですが、そんな便利な ものはそうそう見つかるものではありません。そういう場合、間接的な証明を いかに組み合わせるかが、腕の見せ所です。 例えば、こんな証明の仕方を考えました。(即行で考えたので、あまり練れて いませんが……。) (1) 産婦人科学会は、日本政府の意向に従う。 ← 過去の事例などを用いて証明する。 証明した後で、「だからプランの後では、産婦人科学会は自主規制を撤回 するはずだ」と主張する。 (2) 自主規制がなくなると、医師たちは代理出産または着床前診断を実施する。 ← 「自主規制さえなければ……」という医師の声を引用する。 (3) 不妊症の患者の中には、代理出産または着床前診断を希望する人がいる。 ← この手のカードはケースに既に入っているはずなので、それを流用。 なお、practicality は、プランの手段を具体的に記述するほど証明しやすくなる 傾向があります。例えば、「法律を制定し、違反時の罰則もその法律で規定して おく」とプランに書いておけば、法的罰則の効力について一般的に説明してある カード(百科事典など)が practicality の証明に使え(ることもあり)ます。 ただし、この場合も、証明自体は必要です。決して、プランに書いておけばいい だけの話ではありません。 さらに、確実さを考えると、practicality や workability が万が一 否定され ても残るような AD をケースに入れておくことも重要です。例えば、代理出産 または着床前診断が実施されなくても得られる AD や、実施さえされれば成功 しなくても得られる AD などです。 これでは「???」かもしれませんが、以下の流れ図で書けば分かりやすいと 思います。 a) プランを採択する ⇒ プラン採択自体から得られる AD ↓ ↓ Practicality ↓ b) 代理出産または着床前診断が実施される ⇒ 実施自体から得られる AD ↓ ↓ Workability ↓ c) 問題が解決する ⇒ 問題解決から得られる AD(普通の AD) こうやって AD の出所を複数にしておくと、つぶれにくいケースが出来上がり ます。さらに、a)→b) や b)→c) のリンクを複数用意すると、強いケースに なります。もっとも、あまり複雑怪奇にするとジャッジに伝わらなくなる可能性 があるので、ほどほどに。(経験者談) 強いケース作りのコツは、「ここを否定されたら AD は全滅」というボトル ネックをなくすことであり、practicality がなくても残る AD を入れて おくのはそれに適っています。 一方で、AD のすべてが practicality に依存していながら practicality を 証明していないケースというのは、言ってみれば敵にボトルネックを教えてし まっているようなもので、とても危なっかしいことをしています。 ----------------------------------------------------------------
2010-10-17 22:55
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0