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“Practicality”と“Workability”――その1 [ディベート]

今期の JDA推奨論題は代理出産および着床前診断であり、2005年の後期と(ほぼ)同じです。 そこで、かつてとあるメーリングリストに投稿した記事のうちで関係ありそうなものを、ここに再掲載しようと思います。
第1弾は、『Practicality と Workability』です。長いので、いくつかに分割します。なお、以下の「予選3試合」は2005年JDA秋大会を表わしています。また、リンク先のチェック等は行なっていないので、その点はご了承ください。
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予選 3試合をジャッジした内、2つのケースは着床前診断、残りの1つは代理
出産でした。でも、3つのケースを見て、共通して気になった点がありました。
それは、「プラン採択後は、着床前診断や代理母出産が実際に行なわれる」と
いう証明をしていたケースが皆無だったことです。一方、対する否定側のうち、
その点をしっかりと指摘していたのは 1チームだけでした。指摘すれば楽に
勝てるのに……。

「プラン採択後は、着床前診断や代理母出産が実際に行なわれる」という証明
は一般的には practicality(実現可能性?)と呼ばれますが、予選で見た
6チームのうち 5チームは、どうもこれを重視していなかったようです。
(もちろん、たった 3試合から一般化するつもりはありませんが。)


そこで、practicality と、それと対になる概念である workability とについ
て、簡単に解説してみたいと思います。

これを読んだら、practicality を証明していないケースは怖くて出せなくなる
と思います。また、否定側のときにそんなケースに出会ったら、楽に勝てるはず
です。


なるべく自説に偏らないように説明してあるつもりですが、おかしな点や不明瞭
な点があったら指摘していただけると辛いです。

また、私は practicality と workability の定訳を知らないため、これらを
英単語のまま記述しています。そのため、読みにくい点があることを予めご了承
ください。



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● Practicality と workability とは?

Practicality と workability とは一体何でしょうか?  実は、参考にする資料
によって、両者の指す範囲が異なっています。(同一視している資料さえも
あります。)

ちなみに、“practicality workability "academic debate"”というキーワード
を Google に入れてみると、検索結果は以下の通りです。
http://www.google.com/search?num=50&hl=ja&q=practicality+workability+%22academic+debate%22&lr=


ここでは、以下のように使い分けることにします。

 Practicality:
   プランに書いてあることが本当に実現するか?

 Workability:
   プランに書いてあることが実現したとして、本当に AD が得られるか?
   (例えば、問題が解決するなど。)


両者を簡潔に説明してあるものとして、私がかつて受講したセミナーのレジメ
を引用します。
(ウルトラマンの例って、最初に思いついたのは誰なんでしょうか? > ご存知の方)


1990年 NAFA夏セミナー
AFFIRMATIVE CASE(講師:佐藤好一郎氏)のレジメより:
------------------------------
  Solvency の証明は以下の二つの要素を示すことによってなされる。
 * Practicality
  Plan の遂行が可能かどうか?

 * Workability
  Plan の遂行によって実際に問題が解決できるのか?

  この二つがどのように違うのか良く持ち出される例だがウルトラマンを使っ
て説明してみよう。

(例・5)
   東京に謎の宇宙人が攻めてきた。僕らの地球が危ない。この大事件を君
  ならどう解決する? A君と B子は次のような Plan をそれぞれ考えた。

  A君・・・ウルトラマンを呼んで助けてもらう。
  B子・・・アントニオ猪木を呼んで助けてもらう。

   が、しかしウルトラマンはテレビ番組の中の存在で実際にはいないので
  (と私は思っている。)呼ぶのは不可能だろう。これが Practicality の
  問題である。また、アントニオ猪木は呼ぶことはできてもわざわざ地球を
  侵略しにきた宇宙人の軍団に勝てるわけがない。詰まり Practicality が
  あっても Workability がないといえる。
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以下の説明では、practicality と workability との区分を、上記のレジメと
同様にしてあります。ただ、正直言うと、上記のレジメの区分が一般的なもの
なのか、それともローカルなものに過ぎないのか、私は知りません。なので、
ご存知の方がいましたら、教えていただけると幸いです。



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● Practicality の無い例――イソップ物語より

Workability はあっても practicality が無い例として私が良く挙げるのは、
現代イソップ物語の「猫に鈴」という話です。以下に引用します。

http://www.diarix.jp/aesop/sub/story02.html  より:
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猫に鈴 

 昔々、世界中のねずみが集まって猫の攻撃から身を守る最善の方法を巡って
会議を行いました。いくつかの提案に議論が戦わされたあと、地位と経験のある
ねずみが立ち上がりました。

「君たちが賛同して実現してくれれば、今後必ずや我々を守ってくれる妙案を
思いついた。我々の敵である猫の首に鈴をつけるんだ。奴らが近づけばその鈴
の音で危険がわかるという寸法だ」

 この提案はみんなから大いに賛同され、採用が決定されました。その時古参
のねずみが立ち上がって言いました。

「わしは君の意見に賛成だし、この提案はとてもすばらしいと思う。しかし
ちょっと訊くが誰が猫の首に鈴を付けるんだ」
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この物語からプラン・practicality・workability を取り出すと、以下の通り
です。

プラン:
  ネズミの誰かが猫の首に鈴をつける。
Practicality:
  猫の首に鈴がついた状態が本当に実現する。
Workability:
  猫の首に鈴がついていれば、猫が近づくのが音で分かるから、ネズミたちは
  猫から逃げることができる。

このプランは、workability はあるけれど、practicality が無いというわけ
です。(「プランの主体が不明瞭」という捉え方もできますが。)

ディベートにおいて、ケースを作るときに、これと同じことをやらかしてい
ないでしょうか?  つまり、解決性等の「プランを採ると状況はどう変わるか」
という話を、プランの内容が実現してしまったところから始めていないでしょ
うか?(← 私はやらかしました。)
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今回はここまでです。


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